『都合のいい女』読み終わって気付くタイトルの深さ......。それはまるで様々な切なさが何層にも重なった地層のごとく。
まず受の金江ですが、酸いも甘いも同時に味わえるような健気すぎるビッチです。ずっと忘れることができなかった高校時代の元カレ・藤田のために金江は女装してエッチしようと持ち掛けます。ビッチを気取っていますが、藤田への思いはとにかくピュア。一方、攻の藤田はゲイであることを受け入れらないという葛藤持ち。世間一般の幸せをとるか、自身の気持ちに素直になるか......。そんな藤田と関係を続ける金江がいじらしく可哀想で胸を打たれます。
「このふたりの不毛な関係は一体どうなるのか」と続きが気になると同時に、「早く幸せになってほしい」という強い願望から、ページを読む手が止まらない.....！ もどかしく切なく、けれども最後はきちんとおさまる。心に刺さるものが多い作品ですが、だからこそ非常に印象深い作品でもありました。

＜あらすじ＞ 「再会して――ろくに話さず、最低なセックスをして、それでも笑っていられるのは――大人だからか......？」高校時代、フジは同じ部活のカナと付き合い始めるが好きだからこそしたい俺と、性に臆病なカナは徐々にすれ違い結局別れてしまう。...それから10年後。

ちょっとした誤解から別れたカップルは、偶然の出会いでワンチャンあるらしいですよ。まさにひとつのチャンスを掴んだのがこの作品です!!
攻の瑛二は、最初強引、途中甘々、最後ヘタレという三度おいしい味わいのある男。受の春人はツンツンしながらも瑛二にほだされちゃう、だめんず好き(！？)かわいこちゃん。自分のことを裏切った瑛二を拒絶したいのに、瑛二の肌の匂いや弱いところを責められるキスに春人はめろめろ......。恋愛の抗えない、どうしようもない部分が巧みに表れています。なし崩しに関係を再開すると「あれ、これ前にも読んだような......」となりがちですが、本作は甘々とすれ違いを繰り返しながら絆を深めていくストーリーがぎゅぎゅっと1冊に詰まっています!!復縁するまでの過程も、復縁してからの彼らの日常もどちらも楽しめるというところも魅力のひとつかと思います♪
濃厚な甘々エロも肉厚なストーリーも楽しみたいという欲張りさん、この機会にぜひとも一読してみてくださいね!!

＜あらすじ＞ どこがイイかも全部、コイツには知られてる――春人には忘れたい記憶があった。それは、学生時代に親友の瑛二と付き合っていたという事。しかしある日、WEBデザイナーとなった瑛二と偶然オフィスで再会し、家まで押しかけられてしまう。「俺はずっと離れたくないって思ってた。お前は違ったのかよ」――強引なキスと肌の匂い。

攻同士の攻防戦と見せかけてただの痴話喧嘩！？イチャイチャたっぷりに再会BLを楽しみたい方、ぜひこちらをどうぞ！
大学時代、男同士で初めてイタした能代と足鷹。足鷹は能代のためにネコをしたにもかかわらず「女との方がよかったぞ」と言われしまい......。トラウマからタチ専になった足鷹VSとにかく足鷹を溺愛したい能代の再会攻攻バトルいざ開幕！？タチ同士のノーガードの殴り合い！ 勝ったほうがそのまま押して......のような展開が実に爽快です。過去にクズ発言をした能代も今では足鷹に尽くしまくり。再会したらいい男になっている、というのも再会BLの妙ですよね!!
因みに本作のキーアイテム「プチトマト」にまつわるエピソードにも萌えキュン必至！ 付き合っている頃に能代にもらったというトマトの苗が実にイイ仕事をしてくれます！

＜あらすじ＞ 【抱いてやろうか。お前がネコでも構わないよな？】 ゲイの足鷹には忘れられない男がいた。過去に一度だけ自分を抱いた男・能代だ。能代とのセックスは苦々しい思い出だったことから、二度とネコはしないと誓った足鷹は色男に成長する。ところが数年後、偶然にも能代と再会し、さらに猛アタックをかけられて…！？

「再会してもクズはクズだった......！でもそこから！？」そんな展開、気にならないワケがない！ 次にご紹介するのは、付き合っていた同士の再会......ではなく、大嫌いな相手との再会BLです！
受・聡の視点からみた陽介はとにかくクズ。あまりのクズさに序盤は聡に同情したくなるほどです。しかし、陽介視点で追っていくと、クズというよりは聡に甘えたい傲慢な俺様であることが判明。聡のこと、ちゃんと好きなんですよ！ 聡に好かれるために頑張る陽介の姿には、クズ好きの方もそうでない方もきっと応援したくなるはずです。クズだったからこその頑張りや、嫌いだけど突き放し切れないといった展開は、再会BLの肝ですね～！ もちろん、気持ちが通じ合う前と通じ合った後のエッチの違いにもぜひご注目ください。同じ行為なのに全然違いますっ！ あと、スタッ腐は密かに当て馬・湊人も応援中です(笑)
シリーズ作となっていますが、前作未読でもノープロブレム！ 予期せぬ再会を果たした彼らの恋を一緒に見守りましょう！

＜あらすじ＞ 漫画編集者を目指し転職した国中聡。憧れの職場に心躍らせていたのに、元カレの樋口と再会してしまう。彼は営業部のエースとして活躍していたが、聡にとっては手酷い初恋を経験させられた最低な男。相変わらずの強引さで、早速押し倒されてしまって…。「大人しくしろって、痛くされたくないだろ？」身勝手で大嫌いなのに、翻弄される──。

メガネ、スーツ、40代。こちらはいずれも腐女子のツボを押しまくる普遍の萌え要素です。そんなオイシイ設定を持つ受と攻が20年ぶりに再会？
受も攻もメガネでスーツ、そして40代。通勤電車で偶然見かけた好みの男が、実はかつてフッた相手だった!!そんなラッキーなんだかアンラッキーなんだか分からない形で再会を果たすふたりですが、とにかくどちらも良い感じに枯れていておっさんフェチにはたまらないものがあります！ クール系と見せかけて実はとっても健気な天野、過去の過ちを繰り返さないよう探り探りな竹原。年を重ねてからも恋に右往左往するふたりの姿は可愛いとしか表現できません！「メガネを外すと老眼だから見えない」「お前はメタボ」そんな中年ならではのセリフはもちろん、「見られるなら若くてきれいな時がよかった」なんていじらしすぎるセリフまで、甘くて可愛いおじさんたちがテンコ盛り！ 読んで損はない一作ですよ～！

＜あらすじ＞ 今日の星座占いは一位！ ラッキーアイテムはカラフルな靴下!! しかし夢に見たのは、十年以上忘れられない高校時代の同期の夢――そんな朝を迎えた竹原（たけはら）は、通勤中の満員電車で好みの男を発見!!しかもその男が、同じ職場に異動してきた！？ 運命の再会かと喜んだのも束の間、なんと彼は今朝の夢に出てきた男...高校時代に竹原がフッた元カレの天野（あまの）だった――!!

背徳感というものはBL定番のスパイス。しかし本作では、受攻どちらも現在恋人がいる状態で再会を果たすというかなりガチの背徳感を味わえます。
高校時代の元カレ・和秋と偶然再会したソバカス男子・洋春。未練タラタラで別れた過去も、新しい恋人と過ごす日々の中で吹っ切れたハズでした。しかし、とにかく攻の和秋が無自覚な言動で洋春を煽る煽る......！ お互い恋人がいると分かっていても、和秋のキスや愛撫を拒むことができなくて......。気持ちを現在の恋人の方へ向けようとしても、どうしたって和秋に惹かれてしまう。葛藤しつつも求められれば淫らに反応してしまう洋春に切なくなったり興奮したりと、ジェットコースターのようなアップダウンを読み手は体感するハズです。
元サヤBLですのでもちろん最終的にふたりはくっつくのですが、それはつまり今カレがフラれることの裏返し。洋春の恋人・夏朗さんの優しさに涙腺崩壊待ったなし。犠牲を払ってでも結ばれたいと願ってしまうなんて、まさに本能レベルの恋。だからこそ「今度こそ幸せになれよ！」と応援したくなるふたりのお話でした。

＜あらすじ＞ 5年前に別れた元カレ・和秋と偶然再会し、飲みに誘われた洋春。もう吹っ切れたつもりだったのに、和秋の何気ない一言に翻弄されまくりで……。お互い恋人がいるにも関わらずホテルに連れていかれ、突っぱねても悪気なくけしかけてくる和秋に、ずっと蓋をしていた想いが溢れてしまう。ダメだと理解しつつも、ついに身体を重ねてしまうが――…。

ロン毛のゲイ受、しかも元サヤ。あまりにも性癖ドンピシャ過ぎて、初めて読んだときに会う人会う人に猛プッシュしたことをここに告白します(笑)
弟目線という斬新な切り口で幕が開ける本作。弟を育てるために恋愛を諦めた兄と、彼の前に再び現れた元彼とのやりとりを丁寧に描いています。大学時代に付き合い始めた学(兄)と穂高。ノンケのくせに「穂高となら心中してもいい」と言ってしまうくらいにメロメロだった学が、初めて現実と向き合い、別れ話を切り出すシーンは何度読んでも切なくツライ！ 穂高の方もとっくに心を奪われていたからこそ、いかに苦しい終わり方だったかが分かります。そんなふたりのキューピッドが弟・遊。要所要所で紡がれる遊のモノローグはまるで小説の一節かのように情緒的でした。「兄の元彼」ではなくあえて「兄は元彼」。たった一文字の差ですが、そこにはBLを超えた家族愛があるように思います。
30過ぎた大人の不器用な恋模様や彼らを応援する中学生の必死さが胸を打つドラマ、イチオシですよ！

＜あらすじ＞ 中学生の遊（ゆう）は、兄の学（がく）とふたり暮らし。そんな遊の日常に、ある日激震が！遊の目の前で、兄が男に殴られたのだ！殴ったのは、ハデななりした有名写真家・穂高（ほだか）。しかも痴情のもつれが原因らしく……！？

初恋と聞いて思い浮かべるものは何でしょうか。本作で描かれる初恋エピソードは、初々しくも切ない、そして若さゆえの危うさを持つものでした。
元は学生時代の親友同士だった仁科と美山。美山に告白されたことでふたりは友達以上の関係になります。が、仁科が美山を受け入れた理由はなんと「人気者の美山を独占する優越感に浸れるから」というもの。猪突猛進で今しか見えてない美山に恐れをなし、仁科は一方的に美山を傷つけ切り捨ててしまうのです。そんな彼らが大人になり、再会し、幼さゆえに残酷だった自分を省みながら「今」と向き合おうとする......。まさに初恋のやり直し。仁科と美山それぞれの視点で10年を振り返ることで、各キャラの感情をより繊細に感じ取ることができます。
過去を後悔する男と過去から一歩も進めなかった男。大人の恋とは何たるか、全てはこの一冊に詰まっています。「10年前に戻ることはできないけれど、新しく始めることはできる」そんな仁科のセリフが温かく心に響く名作でした。

＜あらすじ＞ 仁科が打ち合わせに訪れたカフェは、学生時代の親友・美山がオーナーを務める店だった。 10年振りの再会を懐かしむ仁科とは対照的に、美山は自分を覚えていないかのように素っ気ない。確かに存在した“友情以上”の関係。切ない「初恋」だったあの頃にはもう戻れないのか──？