時は未来、人類は宇宙開発に乗り出していた……。宇宙の果ての星でたった一人惑星開発の任務についているシン。彼の心の支えは、地球にいる想い人・ルキヤとの毎日の交信とAIが変形した｢ルキヤ｣との擬似セックスでした。｢ルキヤ｣はシンの欲望を受け変形しただけのAI。なのに不思議なほどルキヤ本人の思考と記憶を持っているのです。｢ルキヤ｣に支えられシンは任務を果たし遂に地球に帰還する日を迎えるのですが……。
2人に突きつけられた過酷な運命、そしてその時ルキヤが選びシンへ捧げた深く切なすぎる愛に何度読んでも言葉を失います。肉体が滅びてもAIに魂を乗せてでも、宇宙の果ての貴方に生きて欲しい、そばにいたいと願う愛は残酷だけど切なくて星のように美しい。そんなことを感じさせる表題作ほか、短編が3作収録されています。ストーリー、台詞、作画どれをとっても既視感を覚えることはないでしょう。BLはエロだけではありません。ぜひ本作で多様性に満ちた扉を開けてみては？

＜あらすじ＞
惑星開拓の任務についているシンは、毎日、地球にいる友人で技術者のルキヤに定期報告をしている。夜ごと、ルキヤを想ってAIとの擬似行為をする自分に自嘲しながら、想いを伝える日を待ち望んでいた。

ある夜、住み慣れた自宅に帰ると、そこには見知らぬ青年が。｢どちらさまですか？｣｢津久井ですけど、あなたは？｣｢…津久井です｣
同じ苗字、同じ住所。確かに自分の家のはずなのに、見覚えのない家具や知らない物がある違和感。｢明日また落ち着いて考えよう｣と翌日を迎えても、時空が歪んだような現実は変わらず。ドラマのようだと訝しみつつ、2人は奇妙な共同生活を始めることに……。
2020年刊行の『今日に還る』では、現実と夢が交錯するような独特の空気感が印象的だった加東セツコ先生。この作品でも、説明のつかない状況で出会った顕成（あきなり）と槙緒（まきお）の物語が、静かに、どこか不穏をはらみながら進んでいきます。静止画のようにシンとした2人だけの世界の甘さや、いつお互いが消えてしまうかわからない不安など、SFがお好きな方だけでなく、少し風変わりで切ないラブストーリーをお探しの方にも、ぜひ読んでみていただきたい作品です。

＜あらすじ＞
会社員の津久井槙緒は、いつも通り仕事から帰宅して驚愕!!　なんと、津久井顕成と名乗る男が、ここは自分の家でもあると言うのだ。

ブヨブヨ変身生物、天使、人狼、アンドロイド。いずれも一筋縄ではいかない人外もの4作を収録した山田袋先生のデビュー作より、特に印象的だった『noisy jungle』のご紹介です。
｢人間って昔は私たちと同じくらいの知能があったらしいですよ｣というセリフはアンドロイドのもの。アンドロイドが多数を占め、人間はペットとして飼われているという特殊な設定の近未来が舞台です。アンドロイドのユメオと、ユメオがこっそり飼っている人間のポチ。可愛いポチに性的にも惹かれてしまうユメオは、ペットとキスしたりじゃれつかれたり、またその刺激で勃つのだって当然のこと……と自分に言い聞かせながらポチと関係を持ってしまいます。ユメオが生き物としてのポチを愛でるシーンは必見！｢すき｣と言わせようと頑張ったり、体毛や分泌液、ポチの紅潮する顔をじっくり観察したりしながらユメオの思うことは……。豊かな思考とは逆に無機的なユメオの身体にドキッとすること間違いなし！

＜あらすじ＞
景介のもとに突然現れた、姿かたちを自由に変えられる謎のブヨブヨ。表題作のほか『サーカスも夜半過ぎには』『noisy jungle』『天国の底』描き下ろし『とろける恋人』後日談を収録。

触手マニア垂涎！欲と陰謀が渦巻く宇宙空間から逃れられない……！
月に降り立って300年。人類は地球と環境が似ている惑星を探していました。調査船の乗組員・金田は｢アルゴ｣とよばれる植物によって立入禁止区域｢エリア7｣へ引き摺り込まれてしまいます。アルゴはメスが希少で、自分をメスと判定したオスのアルゴたちによって蹂躙されていく金田……。可哀想だけど、申し訳ないけど……コマいっぱいの触手にスタッ腐はスタンディングオベーションしてしまいました！ようやく逃げ出したものの、悲劇はまだ終わりません。アルゴと交わった金田は実験体として色々な……本当に色々なことをされるハメに……。
哀れすぎる金田と、そんな彼を見過ごせず、命がけで救ってくれた白石の2人は無事にこの閉鎖空間から逃れることができるのか!?そしてアルゴに秘められた秘密とは!?サスペンスと触手が盛りだくさんの本作。前日譚+前後編+後日談の全4話とは思えない濃密な作品です！

＜あらすじ＞
近未来。地球と環境が酷似した惑星｢RED｣の探索隊員・金田はある日、宇宙船内の禁止区域｢エリア7｣で｢RED｣固有の謎の植物｢アルゴ｣と遭遇する。

第三次世界大戦後、地球の人口は緩やかに減少し、それに歯止めをかけるべくクローンを第二の人類として開発を進めている世界。クローン研究者のクリスは同僚のセスに片思い中ですが、彼には可愛い婚約者が。しかしセスは婚約者への対応があまり良くない上、結婚の話をすると微妙な表情に……。これってもしかして両片思い……？そんな時、第二の人類として研究開発中のクローンを臓器のスペアとして作る話が持ち上がり、同じタイミングでセスの婚約者が移植手術が必要な事故に遭ってしまいます。クリスは彼女を救うために彼女のクローンを作ることを提案したのですが、同時に極秘裏に別の計画を立てていて…。
両片思いを拗らせたクリスとセスの2人のすれ違いがひたすらもどかしく、特にクリスの｢セスの幸福のため｣という行動原理が健気すぎて切ないです。最後に重大な秘密が明かされるのですが、涙なくしては読めません。ラストまでクリスの“クソデカ感情”が響く一作です。

＜あらすじ＞
完全な人間の複製に成功した世界。クローン研究所で働くクリスは、同僚のセスに対し特別な感情を抱いていた。しかし彼には清らかで美しい婚約者がいる。思いが募れば募るほど、苦悩するクリス。

本作の主人公・時任博士は、あまりに暇すぎたため、暇つぶし相手になる人型ロボット・ネオンを開発。ところが、何をどう間違えたのかネオンは｢最上の暇つぶし｣は｢セックス｣であると判断し、自分の身体には未装着のモノを求め｢私にお●ん●んをください！｣と迫るセクハラロボットと化してしまいます！序盤は、どうしてもエッチな展開に持ち込みたいネオンとそれを阻止したい博士の攻防が楽しい怒涛のエロコメディ！息もつかせぬギャグの襲来には要注意です♪
さらに、それだけにとどまらないのが日野雄飛先生。ちょっとした事件の積み重ねでふたりの関係が少しずつ変わる過程には、いい意味で予想を裏切られ読み応えも抜群！｢博士を喜ばせる｣という目的だけを強く持つネオンの機械らしさと、博士の人間らしい感情の機微の対比に、思わずため息が出ました。
楽しくて味わい深い、でも説教臭くない、絶妙なバランスのラブコメをお楽しみください♪

＜あらすじ＞
｢博士、私におち●ち●をください！｣暇つぶしの相手を求めて、人型ロボット・ネオンを作ってみた時任博士。しかし起動した瞬間、｢最上の暇つぶし｣＝｢セックス｣だと認識されてしまって…!?

人外好きのあなたに届けたい！ロボットアニメのような壮大な世界観で繰り広げられる、人間とアンドロイドの感動のラブストーリーです。
人間とアンドロイドが、バディとなって巨大ロボに乗り込み、謎の巨大生物と戦う200年後の世界。ベテランパイロット・寛座の相棒は、元気でピュアなアンドロイドのゲイル。厳しくも温かい寛座に惹かれるゲイルの想いは止まりません！見た目は完全にアンドロイドのゲイルが、人間のように恋に悶え、自らを慰める姿に、愛おしさが溢れ出すこと間違いなし♪さらに、両片想い状態で迎える初キスは、まさに萌の嵐です…！
物語が進むと、ゲイルに隠された重大な秘密が明らかになっていきます…！衝撃の事実に苦しむゲイル、そして彼を命がけで救おうとする寛座。2人の絆を、ハンカチ片手に見届けてください。もちろん、戦闘シーンも一切のぬかりなし！ロボBLとしても年の差BLとしても大満足な作品です♪

＜あらすじ＞
地球を守るため、人類は巨大マシンと、それに人間と共に乗り込み制御する“コアドロイド”を発明した。コアドロイドのゲイルは、唯一自分を人と同じように扱ってくれる寛座に憧れ…

ディストピア、終末、SF、死を待つ孤独な美しい科学者、謎の青年……散りばめられたキーワードに、直感的に惹かれる方も多いはず！ 美しい世界観のBLでありながら、SFとしても丁寧に描かれた作品です。
舞台は近未来、汚染が進みほとんどの人類が他の星へ移住したあとも荒廃を続ける地球。ひとり地球に残り、荒廃に抗いながら滅びゆく世界を見つめる日々を送る科学者・シロウのもとに、ある日突然、謎の青年・クロエが現れます。｢やっと会えた｣と語るクロエから真っ直ぐな愛を向けられるシロウは、戸惑いつつも惹かれる気持ちを抑えられません。シロウとクロエの対話によって徐々に明かされる真実は衝撃的。そしてクロエがどれだけシロウに事実を伝えたかったか、そして孤独に終わりを待つシロウにとってクロエがどれだけ救いになったか……。伝わる想いはさらに深いものでした。切なくも胸が温かくなるラストまで見逃せません！

＜あらすじ＞
終焉を迎えようとしている世界で、荒廃を食い止める生命体を生み出すためだけに生きてきた科学者のシロウ。｢やっと会えた｣という言葉とともに彼の前に現れたクロエの正体とは……!?